トレッドミル

みなさんは、トレッドミルという言葉をご存じだろうか。

あるいは知らなかったのは私だけだったか。

何のことはない、いわゆるウォーキングマシンである。
義父から20年ほど前に譲り受けたのだが、凝り性な義父らしく、それはスポーツジムにおいてあるような立派なもので、譲り受けた当時は自宅まで運ぶのに相当苦労した思い出がある。

当初は一日おきくらいのペースで、一回30分から40分くらい走っていた。
しかしそのペースは60才を過ぎる頃から2週間に一度の頻度にまで落ち込んでいる。
その主たる原因はやはり体力・気力の低下であろう。

私はこのマシンをサンルームに置いてあり、居間にあるテレビの角度をちょいと変えてやれば走りながらテレビを見ることができる。
やがてテレビ番組を見ているのでは物足りなくなり、パソコンと連携させ、YouTubeを見るようになった、次は音質にこだわるようになり、USB DACを接続し、ついにはヘッドホンも購入してしまった。

その投資の対価としての幸福感を果たして十分に得られたのかと懐疑的にはなるが、自分に課した30分のランニングがあっという間のこととして終わってしまうように感じられるのだから、それなりの満足感はある。そして何より体を動かしたことによって体が軽くなるこの感覚に私はすっかり魅了されてしまうのである。
このトレッドミルとパソコン動画の組み合わせは最強だ。

しかし私は気づいてしまったのである。
あと10年もすれば、今のように走ることはできなくなる。さらに10年過ぎればその時はひょっとしたらベッドの上で寝たきりになっているかもしれない。もちろん生きていればの話だが。

その時、今の自分を思い出して、ため息交じりに戻れない過去に思いをはせるのであろうか。

だとすると今というこの時は、寝たきりになることへのプロローグなのかと考えてしまう。

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